車両レイアウト上、得意コースであった栃木県のモビリティリゾートもてぎで行われた第4戦では、予選3番手と上位につけながらも決勝レースではライバルたちの速さを前に7位という結果に終わっていたPorsche Team EBI。シーズン終盤戦に向けてなんとしても表彰台、そして勝利を掴みたい気持ちをもって臨んだ第5戦の舞台は、三重県の鈴鹿サーキット。もてぎとはコース特性が異なるものの、EBI GROUP Cayman GT4 RS CS は過去に優勝も飾っており、思い出深いコースでもある。そんな一戦に向け、チームは9月26 日(木)の午後1時30分から行われた2本の特別スポーツ走行に臨んだ。この日の鈴鹿は雲が多いものの蒸し暑いコンディションで、そんななかチームは久保凜太郎から走行をスタートさせると、北園将太へ交代。2回目は北園から岩澤優吾、山野直也と交代しながら周回していった。走行2日目となった9月27日(金)は、午前10 時30 分からの1回目は山野がひとりで走行し、午後2時45 分からの全クラス混走となった2回目は、山野、久保、北園、岩澤、最後にふたたび久保と走り、最後に2分14秒423というベストタイムで3番手で終えた。「悪くないと思います。決勝のロングランに向けたセットアップを終えたのですが、今回かなりセットの方向性を変えました。ニュータイヤでは速いわけではないのですが、北園選手もすごく乗りやすいセットにしました」と山野は語った。決勝レースに向け自信をつけてチームは専有走行を終えることになった。
1日半の走行を経て、迎えた9月28日(土)の鈴鹿は曇り空のもと迎えた。午前10時30 分からのフリー走行は久保と北園で走行を終え、午後2時からの公式予選に向けチームは準備を整えた。予選では、まずはAドライバー予選に北園が出走。3周目に2分13秒205 を記録するが、さらなるタイムアップを目指したラップのS字でコースアウトを喫してしまった。「想定よりも良いアタックができたのですが、コースアウトはチームにも申し訳ないですし、自分に残念です」と北園は悔しがった。また久保も2分11秒038を記録するが、四輪脱輪でタイム抹消。8番手となった。しかし北園のタイムもあり、合算では4番手という好位置に。山野、岩澤ともしっかりと予選を終え、チームは翌日の決勝レースに向けて良い手ごたえを得ながら予選を終えた。
予選4番手と表彰台を狙える位置につけ、迎えた9月29日(日)の決勝日。朝から鈴鹿サーキットは曇り空だったが、午前9時30分過ぎから、サーキットに雨が降り出してしまった。これで路面は完全にウエットとなったが、午前11時のスタート進行を前に雨は止み、コンディションは少しずつ乾きはじめた。Porsche Team EBI のスタートドライバーを務めた岩澤優吾は、スリックタイヤを履き午前11時50分からの決勝レースをスタートした。序盤、岩澤はひとつポジションを上げ3番手につけていく。クラス上位の#25 Z NISMO GT4、#34 R8 LMS が激しい競り合いをみせ、その後方で岩澤は#52 GR Supra、#885 GR Supra からの攻勢をしのいでいく。路面が急速に乾いていくと、岩澤の前後は少しずつギャップが広がり、スティント終盤にスピンがあったものの、ダメージなくコースに復帰できた。チームはスピンの直後、岩澤をピットに呼び戻し北園にスイッチ。Aドライバーハンデキャップを消化したが、このピットタイミングではフルコースイエローが出ており、タイミングも絶妙。北園はコースインした後もフルコースイエローが多発する荒れたレースのなか、安定したラップタイムを維持し4番手でレースを進めていく。北園は29 周を走るとその大役を果たし、山野にスイッチした。ここで二輪交換作戦を行い、ピットタイムを稼いだが、それでもパフォーマンスも良好でペースも速い。このスティントで山野は2番手に浮上すると、序盤から好ペースでトップを走っていた#34 アウディのギャップを少しずつ縮めていくことに。山野は84周まで走ると最後のスティントを久保に託した。今季ここまで苦しんできたチームにとって、表彰台、そして優勝のまたとないチャンス。久保は交代後、タイヤが温まった3周目に2分14秒589というベストタイムを記録し、#20 Z NISMO GT4 をオーバーテイクするなど好ペースで前を行くライバルたちをかわしていった。そんな久保の走り、そしてチームの頑張りが101周目についに実った。トップを争っていた#52 GR Supra を先行し、首位に躍り出たのだ。久保はその後も集中を切らすことなく、ST-Zクラスで唯一121 周を走破。ついにEBI GROUP Cayman GT4 RS CS はST-Z クラス優勝を飾ることになった。過去にも優勝を飾っている相性が良い鈴鹿で、ついに掴んだ今季初勝利。4人のドライバーたちは、表彰台の中央で喜びを爆発させた。そしてこの勝利は、今シーズン初めて日本車以外がST-Z クラスを制する記念すべき勝利ともなった。シーズンは残り2戦。この勝利でタイトル争いにも名乗りを上げた。チームは次戦へ向けふたたび表彰台の中央を目指していく。
チーム名:Porsche Team EBI
マシン名:EBI GROUP Cayman GT4 RS CS
ゼッケン:#22
ドライバー:北園 将太/久保 凛太郎/山野 直也/岩澤 優吾